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日本の伝統建築「和室」について
2023.1.15リフォームのコト
年末年始やお正月というと里帰りなどで祖父母の家にご挨拶に行かれる方も多いと思います。そんな時にほっと落ち着く空間は昔からの和室。畳に用いられるいぐさが薫り、室内に差し込む日光も穏やかな色合いを見せます。和室は古臭いと思われる方もいる反面、その昔ながらの造形に魅力を感じている方が新築物件やリノベーション物件で和室を造ることがあります。また、リビングの一角の小上がりや置き畳を利用した畳スペースを設けている住宅もあります。今日はそんな変わらぬ人気を誇る和室の歴史や機能性についてお話しします。
和室の歴史
和室は日本の文化の興隆とともにそのスタイルを確立し、西洋化が進み洋風の建築物が主流となる中でその数を減らしていきました。和室の誕生よりもその前に、和室には欠かせない畳の誕生があります。畳は「古事記」の中にも語句として出てくるなど日本では古くより用いられている建材です。現存する最古の畳は奈良時代のもので、聖武天皇が台の上にマットレスのように敷いて寝具として使っていたとされるものです。平安時代では寝殿造りと呼ばれる建築様式が貴族の間で主流となり、正殿を中心とした東西にコの字に広がる建物が作られます。寝殿造りは板張りの床を持ち、その上に寝具や座具として畳を用いていました。現在の「置き畳」のような用い方です。フローリングに置き畳を敷くと簡易的な和室の模倣のように見えますが、歴史を紐解くと伝統的な畳の用い方であるようです。
平安京時代の内裏(だいり)と呼ばれる宮中には、こうした寝殿造を中心にいくつもの住居が連なり大きな建造物をなしていました。そしてその内裏とともに、朝堂院や官衙といった中央行政官庁をまとめ大内裏(だいだいり)と呼ばれる中央機関を成していました。この大内裏はおよそ160ヘクタールの土地をもっており、「東京ドーム」で言うと34個分だったそうです。
また、余談ではありますが源氏物語の主人公である光源氏(光の君)の母・桐壷の更衣は帝の女房のなかでも位が低く、与えられた「桐壷(淑景舎)」という住居は清涼殿から最も遠い北東にありました。この部屋に行きつくまでに数々の女房が息をひそめる部屋の前を帝が渡り歩いたとなると、物語ではありますが並々ならぬ帝の愛とその足音に嫉妬の炎を燃やす女房達の苛立つ思いを感じ取ることができます。
書院造(しょいんづくり)の登場
さて、畳が一般的に和室で見るような床材として用いられるようになったのは室町時代から近世初頭にかけて成立する「書院造」をきっかけとします。ここでは部屋全体に畳が敷かれ、襖や障子、床の間などの和室の様式が出来上がっていきます。書院とは書斎と居間を兼ねた空間を中国風に呼称したもので、この書院を中心とした武家屋敷を書院造と呼んでいます。戦場での戦いを生業とする武士は、この書院を接客空間として用いていました。お寺や伝統的な建造物でも用いられている和室という風格だけではなく、戦乱の時代を生きる武士が人と会って会話をするひと時の空間であったという点が、和室の空間を人の心が穏やかに落ち着くものに変えていったのかもしれません。
また、和室の様式は茶道の発展をもって様式のさらなる発展を遂げました。茶道は近世を代表とする日本文化であり、武士や貴族などの権力者のたしなみでした。ここから和室独自のお作法が作り上げられていきます。
長屋での生活
長屋は主に三種類に分けられます。
1、表長屋
一番広い長屋を「表長屋」と言います。これは奥行四間半(8.1m)・間口二間(3.6m)というもので他の長屋とは違い店舗四畳と言われるスペースがあり、文字通り商人の店舗兼住居として用いられていました。この表長屋は通りに面して建てられ、見世(店)を開きます。
この表長屋を表店とも呼びます。この表店に住むことができるのは商いをしているものかベテランの職人、またや富裕層などの金銭面で裕福な暮らしができる人に限られていました。そして、通り沿いの表店が囲む内側のスペースには裏長屋と呼ばれる「割長屋」「棟割部屋」がひしめくように立っています。
2、割長屋
割長屋は二間(3.6m)×二間(3.6m)の正方形の住居です。こちらは1階部分と2階部分が分かれている二階建てとなっています。今でいうロフト付きのワンルームのような形状です。
3、棟割長屋
長屋と言えばこの割長屋。二間(3.6m)×9尺(2.7m)と狭小な一部屋に一人身や家族連れなど様々な人々がその日その日を生きていました。職業は町人や若手の職人、農民などをしていました。
以降の歴史では住宅の近代化のなかでも和室は重視され、洋室と言っても和室の様式に沿ったものが作られてきました。そして現代では和室の無い住宅も増え、和室がある家でも一部屋だけというように徐々にその存在が押し出されてきました。
和室の魅力が再評価されています!
流行り廃りのサイクルの中で流行というほどでもありませんが、和室の魅力が再評価されています。和室が一室でも住居に欲しいという方が増えており、洋室から和室へのリノベーション工事も行われています。和室の魅力は日本的な美の感覚がある方なら国籍を問わず理解しているとは思いますが、現在の住宅で選ばれるためにはそれだけでは不十分です。今和室という選択肢が増えている背景にある和室の機能性からその魅力に迫っていきましょう。
和室の機能性について
住宅や設備はその歴史や環境の中で絶えず洗練され、進化を続けているものです。日本では長く和室の時代がありました。その間に積み上げられてきた和室の機能性についてここで見ていきましょう。
柔軟な利用ができる
和室の最も特徴的な機能はその汎用性にあります。一室の利用という点ではちゃぶ台やこたつを置くことで居間として利用ができ、片付けることで遊び場や寝室に替えることができます。また、和室は廊下を挟まずに連結した部屋を障子で仕切るという作りが基本的なものです。障子を開けることで部屋がつながり、一室から広間へと様変わりをします。
子育てとの相性◎
子育て中に気になることは不意に起こる怪我と騒音。和室の主役である畳にはクッション性がある為転んだときにも怪我をしにくく、音の響きも抑えることができます。遊んだ後はそのままお昼寝ということも可能です。障子を破られないかという一点が心配ですが、近年ではプラスチック製の障子紙のような破れにくい素材を用いることが増えています。
建材の機能性
和室の建材と言えばまず代表的なものとして畳があげられます。畳には吸湿や保湿効果があります。湿度を吸収することで過ごしやすい空気作りをしてくれます。また、畳には断熱性があるため、フローリングのような底冷えを感じることはあまりありません。また、壁材に漆喰があわせて使われている場合はより調湿効果が高まり、消臭効果にも期待ができます。そこに木材の暖かな印象が加わることで、とても穏やかで落ち着いた空間になります。
和室に触れてみましょう
最近はコロナ禍によりおでかけする機会が減少していますが、最近では少し回復模様にあります。旅館や神社仏閣というところで和室に触れてみると、ここ数年の緊張が少し抜けていくような落ち着きを感じることができると思います。日本人が古くより愛してきた和室という伝統に触れ、これからのリフォームや新築のイメージをしてみてもいいかもしれません。
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